リノベ×オーダー家具とは?

「リノベーション×オーダー家具」
それはより良い住空間をつくるための一つの答え

 

「リノベーション×オーダー家具」とはどんなサービスなのか?

インアンドエムスクエアの市崎さん (建築士)とスタンプファニチャーの土井さん(家具職人・デザイナー)お二人にお話して頂きました。

 

従来別々のサービスをワンストップで

 

市崎
一般的には施主の皆様が工務店などに新築やリノベーションを依頼し、施主様自ら家具を選ぶというのがほとんどで施工現場において建築家(工務店)と家具職人(インテリア)が連携するということはほとんどないんですよね。

土井
そうですね、多くの場合、家とインテリアは別という考え方ですね。たまに施工中の現場に伺うことがありますが例えば「あの壁にライトを設置したいのでここに電源を作って欲しい」とか我々の立場から直接言えないのが現状です。施主様が間に立ってというケースはありますが、それだと施主様に負担が掛かってしまいますし、高い確率で現場側から煙たがられてしまいます(苦笑)

市崎
有名建築家ならそれらを全て行いますが身近にそのようなサービスを提供しているところは少ないのが現状ですね。
家を立てるだけではなく、広い視野で今から住むことを考えると「リノベーション」と「家具」をトータル的に同時進行で考える、いわゆるワンストップで行うことはベストだと思うんですよね。

土井
その通りです。工務店さんもある程度は家具の置き場所を提示しますけど家具設置のための設備、例えば照明を引くためのコンセント位置や家具設置のための幅や高さなどはあらかじめ決められていますよね。
その中で家具を選ぶとなると、選択肢も限られてくるのでやはり難しいと感じます。

市崎
やっぱり家具選びは難しいですか?

土井
そう思います。家具を買うという経験はそうそうできるものではないですから、経験値が少ない場合なかなか大変な作業になる思います。
それに加えて家具は高価なものですから、買ってみて合わなかったから買い替えるということは気軽にできないですよね。洋服ならそれでいいですけど(笑)

 

市崎
私も買ったけど着なかった服がクローゼットに眠るパターンがありますね(笑)

土井
それ僕が時々いただいている服ですよね(笑)

市崎
です(笑)

土井
実際に多い相談が家を建てて5年以内で家具を選び直したいという話なんです。ただ買い替えるにはまだ新しいし、もったいないという感じで、買い替えるまでに至らない事がほとんどですね。

市崎
家具選びの難しさもあると思いますけど最初から建築家と家具職人が一体になることで建物に対しての最適な空間のデザインが可能になると思うんですよね。
建てた後、どの様な生活をするのか? そういう細部まで想像し計算し空間のデザインを行うことで建てた後の「生活のワクワク感」を感じて貰うことができるんじゃないかと。

お客様の要望から生まれたサービス

 

土井
きっかけはとあるお客様なんですけど、「カーテンを変えたい」と相談に来られたんです。
その方は定年退職後、家にいる時間が長くなるにつれ「なんか落ち着かないよ
ね。」「これってどうにかならないかな?」と感じていたようで。
西日が強くて南は暗い、窓際環境が良くないため「カーテンを変えたい」と考えたようでした。
お話しをしていくうちにもっと根本的に変えれないか、という話になっていき、家具だけで解決できる問題ではないと思い、建築の専門である市崎さんに相談したんですよね。

市崎
木造築30年のご自宅でしたね。
最初に家の診断をさせてもらったら床下天井ともに断熱が入ってなく夏暑く、冬はとても寒いので、その点なんかも過ごしにくい原因だったかと。
ですから、工事は断熱改修も行いましたし、該当する部屋のサッシも全て樹脂サッシに変更して温熱環境も改善しました。

土井
そうでしたね。

市崎
最初に平面的な簡略図のイラストを起こして、その時点で家具も含めた空間自体の提案を行いましたね。
家具について土井さんに相談していく中で新たなアイデアが次々に生まれて最初の提案から色々と変更になったり。ちなみに土井さんにいただいた最初のプランがこうでしたね。

土井
ここから少しずつ変更を加えていきましたね。市崎さんの提案でカーテンとブラインドを内障子に変更しました。

市崎
私の設計では良く提案するデザインでして。
また、障子は内部の温熱環境に対してもプラスになります。

土井
そうすると、空間に「和」のテイストが強まったから、ソファのデザインを変えよう。座卓のニュアンスもいじろうという具合に家具のデザインを変更しました。

市崎
そこから、内部の空間をただ全体の天井を高くすると言うのではなく、一部は低くすることで落ち着いて過ごせる場所に設定したり、一部は屋根の勾配に合わせて構造いっぱいまで天井を上げてみたりと内部の空間に起伏を付けるように再構築しました。

土井
これは驚きましたね。この提案で自分の中の空間のイメージが一気に鮮明になりました。
それならばとリビングのペンダントライトをジョージネルソンのバブルランプを3灯並べて、空間の顔にしようと思いましたね。

市崎
ああいった照明は普段の自分の提案ではでてこないセレクトです。
天井の素材は照明に合うような木肌の素材として信州産の唐松にしましたし、床も土井さんと打合せて北海道産のクルミ材を選んだりと、土井さんの家具の素材をより引き出すような素材の検討もできましたね。

土井
ペンダントライト3個の電源の位置もミリ単位で細かく指示させていただきましたね。電機業者さんは嫌がりませんでしたか?

市崎
うちなら全然構いませんが、連携のない業者さんなら絶対嫌がったでしょうね(苦笑)

土井
たしかに(笑)。
この物件ではトータルでブラケットライト3個、ペンダント4個、食器棚の埋め込み電源、あとフロアランプ用の床電源位置を指示させていただきました。

市崎
これだけ細かい電源の指示は今までなかったですね。しかし結果として、無駄のない照明計画ができ、空間の良さに繋がっているんですよね。

土井
こちらの提案に対して、市崎さんが新たな提案を出し、それならこちらはこうしようといった具合にアイデアがどんどん出てきて、いわば音楽のセッションみたいな感覚で空間の精度が上がっていきましたよね。といっても全然楽器できないんですけど(笑)

市崎
(笑)
デザインのセッションということにしましょうか!

土井
それカッコイイですね!

市崎
結果、施主様にすごく喜んでいただけた事が一番ですね。

土井
確かにそれにつきますね。家具を提案する側によくある「ここがもうちょっと広かったら、こんな家具の配置が出来なのになぁ。ここに電源があればこんな提案ができるのになぁ」というのが全く無かったので100%の提案ができたと思います。最初の提案でも自信はあったのですが、仕上がりは最初に比べて格段に良くなったと思っています。

市崎
私も提案する上で、普段自分の設計には無いような家具や照明のデザインが加わることが新鮮でしたし、とても刺激的でした。建築とインテリアが連携することで、新たな幸せの形が生まれるのだと改めて感じましたね。

土井
今後も細かい注文が多いと思いますがよろしくお願いいたします(笑)

市崎
もちろん構いませんが、お手柔らかにお願いします(笑)